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Merry Christmas Mr. Lawrence


季節の移り変わりは早いと思う。

聡君と両思いになってから2度目のクリスマスを迎える。

町は早くからクリスマスのイルミネーションで装飾されていた。

夜になるときらきら煌く灯りに華やいだ気持ちになる。


とはいえ聡君は1月にあるセンター試験のために、勉強の追い込みに入っていた。

聡君の受ける大学の第一志望はK大法学部、弁護士を目指しているそうだ。

今日も食事の時にリビングに来た時以外は、自室に篭って勉強している。

根をつめすぎて体を壊さないかと、すごく心配になってしまう。


夜ももう9時過ぎていた。

わたしはキッチンでお湯を沸かし紅茶を作った。

聡君に差し入れするために。



「深月、ありがとう。」

勉強の手を止め、聡君が紅茶のカップを取る。

ふうと息を吹きかけ口をつける。

わたしはそんな聡君をじっと見ていた。

陶器みたいに肌理の細かい肌と切れ長の目に特別の変化は見られない。

わたしは変わらない聡君の様子に安堵した。


「深月、ごめんね、イブなのにどこにも行けなくて。」

「ううん、気にしないで。」

「深月、少し目を瞑っててくれる?」

わたしは言われた通りに目を閉じる。

机の引き出しが開く音がする。

次にかさかさと紙がこすれる音。

わたしの首の後ろに聡君が触れた。

そして首の周りに一瞬だけ冷たい金属の感触がした。

聡君は何かをわたしにつけたよう。


「目を開けていいよ、深月。」

わたしは聡君がつけてくれたものを指で触れる。

それはラピスラズリをあしらったペンダントだ。

「聡君、これ・・・。」

「クリスマスプレゼント。受験でお店見て回れなかったから通販で購入したんだ。

こんなのでごめんね。来年はもっときちんとしたものを贈りたい。」

「ううん、十分だよ。聡君。」


聡君は首に腕を回したまま顔を近づける。

わたしの額に自分の額をくっつけた。

「・・・あ、キスしてえ、くそ親父との約束さえなきゃ・・・。」

ぼそりと言う聡君の言葉が、熱い息とともにわたしの顔にかかる。


わたしとの仲を認めたお父さんが代わりに出した約束。

キスはダメ。触れ合うのは手を繋ぐだけ。

聡君はその約束を守っていた。


「・・・まあ、でもあの約束にも抜け道はあるのだけどな。」

「抜け道?」

「ようはあれだろ、手を繋ぐっていうの。

繋いだ場所は特定されていなかったから、拡大解釈すればそれこそいろいろ出来ちゃう訳で。」


聡君が耳元に唇を寄せ、わたしに幾つかの事例を囁いた。

わたしの顔が瞬間湯沸し気のように一気に火照る。


「あ、いますぐ実践しないよ? まず受験がんばらなきゃだもの。

それをクリアしないことにはお話にもならない。だけどね深月、」

聡君が目をきらきらさせて、いたずらっこのような笑みを浮かべて言った。

「受験終わってある程度の道筋ついた時には、覚悟しておいてね?」 (終)



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