24 Xmas time +α 観覧車の電飾を堪能した後、わたしと哲哉は車へと戻った。 わたしは、さっき湧いた疑問を哲哉にぶつけた。 「哲哉、あのキス、どこで覚えたん? 初めてやないみたいやね。」 哲哉はわたしの顔をばつが悪そうに見る。 でも出た言葉は「初めてだ。」と。 嘘だ、どう見ても初めてであんな濃厚で情熱的なキスなどできるはずがない。 尚も追求すると、哲哉はふうと大きなため息をついた。 そして意を決したように言った。 「兄貴に教えてもらったのとさくらんぼの特訓。」 兄貴? あのお兄さんですか? ということは、お兄さんがファーストキスの相手? 「うわわわわわ」と声の出たわたしの口を哲哉の手が塞ぐ。 「違う、違う、勘違いするな、どういう風にやるかを兄貴からは聞いただけ。 舌の動きとかは缶詰のさくらんぼを買ってきて、軸に結び目つくったりして鍛えた。 ほんとかどうか分らんかったけど、軸に結び目つくれるとキスがうまくなるって聞いたから。」 了解と伝えようと何度もこくんと頷いた後に、哲哉は手を放した。 ああ、苦しかった。 哲哉は何度も「俺も初めてだから」を繰り返し言ったから、とりあえず信じてあげよう? それとさくらんぼの缶詰。 結び目作るのにそんな意味があるのは知らなかったけれど、やってみようかな、なんて思っちゃったり。 「あ、忘れてた。哲哉に渡してってお母さんから言付かってたんだ!」 わたしはバッグから目当ての茶封筒を取り出す。 それを哲哉に渡した。 哲哉は不思議そうに封筒を開き、中身を取り出そうとしたとき、ぎょっとした顔をして仰け反った。 「・・・春美の母さん、やっぱ濃いわ。」 と呟くと、ハンドルに顔を埋め、うなだれた。 なに、なに? とわたしは哲哉に聞いてみた。 哲哉は無言のまま封筒の中身をわたしに見せた。 中にあったのはゴム製の避妊具。 あはははと思わず乾いた笑い声を出してしまった。 おかん、まじ何考えとるねん・・・。 (そのまんまやけど・・・。) (終) |