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5年前のホワイトデー



3月14日、晴れの日。

とても暖かい。

学校が終わり、いつものようにスクールゾーンを通って家に帰る。

来週23日で終了式、それから春休みになる。

学校へ行くのももうちょっとで終わり。


浩にいは学校もう終わってたっけ。

先週が、中学の卒業式だった。

今月は、全然浩にいの所に行っていない。


高校の試験、確かあさってだったはず。

浩にい、勉強してるんだろうな。


そう思いながら家に帰ると、お母さんが2階を指す。

浩にいが来ているのだ。


わたしは急いで自分の部屋に行く。

浩にいがわたしのベッドに背中をもたれさせて、居眠りしていた。


待ちくたびれちゃったのかな。

でも、来てくれたのが、うれしい。


わたしはランドセルを置くと浩にいの側に行く。

浩にいがいつもわたしにしてくれてるように、わたしは浩にいの頭を撫でた。


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頭を誰かが撫でている。

目を開けるとちーが心配そうにぼくを見ている。


「浩にい、大丈夫?」

「うん、ごめん寝ちゃってて。」


ぼくは苦笑した。

いつもはちーが寝ていてぼくが起こしていたけれど、今は逆だ。


ああ、それよりも大事なこと。

「ちーこれ、どうぞ。」

ぼくは持ってきていた手提げの鞄からクッキーの包みを取り出す。


「浩にい、いいの?」

「今日はホワイトデーだろ? 遠慮しない。」

「ありがとう。」

ちーがうれしそうにクッキーを受け取った。

「浩にい、ここにいて大丈夫なの? 試験・・・。」

「ああ、大丈夫。それより、お願いしてもいいかな。」

「お願い?」

「うん、試験が受かるおまじない。」


ちーはぼくの言う通りに、ぼくの両手を握った。

そしておまじないの言葉を言う。

「浩にいがんばって。試験受かりますように。」


ちーのおまじないはてきめんだった。

心の奥がじんわり暖かくなってくる。


今月ちーとは全く会っていなかった。

勉強で気が張り詰めて、息苦しく感じていた。


でも、このおまじないで、楽な気分で試験に望めそうだ。

ホワイトデー、ぼくから贈り物をするはずが、ちーから贈り物をもっらってしまった。


ちーのおまじない。

心を癒す暖かい時間。


ちーがクッキーの包みを開けた。

「浩にい、いっしょに食べよう。」と、またぼくに眩しいくらいの笑顔を向ける。(終)



5年後本編、千鶴側から見たホワイトデー"「卒業〜ホワイトデー、そして試験」

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