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5年前のバレンタイン



2月14日のバレンタイン。

わたしはチョコを持って浩にいの家に久しぶりに来た。

浩にいは高校受験があるので、しばらく行けなかったのだけれど。

バレンタインは別だよね。


わたしは浩にいのベッドを背にしてもたれて座っていた。

浩にい、学校から帰るの、どのくらいかな。

わたしがいるの驚かないかな。

嫌がられたら悲しいかも。


中3の浩にい、背がすごく高くなって。

声も低くて、電話越しだと浩にいのお父さんと間違えてしまいそうになるし。

どんどん大人になってく浩にい。

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ぼくが学校から帰宅し部屋に入ると、ベッドに寄りかかり居眠りしているちーがいた。

小学4年のちーはあどけなく、寝息をすーすー立てている。

ちーが部屋にいるのを見るのは久しぶりだ。

受験生であるぼくに気を使ってなのか、遊びに来ることがなくなっていた。

その気遣いがうれしくもあり寂しくもある。

遠慮しないで遊びに来ればいいのに。

ちーの手元にラッピングした包みがある。

ぼくはちーの頭をそろりと撫でた。


「・・・浩にい、起きた?」

ちーが薄く目を開けた。

「あ、ごめんね。チョコどうぞ。」

「ちー、いつもありがとう。」

ぼくはチョコを受け取った。

ちーは顔を赤くしている。

不意にちーが顔をしかめた。

口を手で押さえ、くしゅんとくしゃみをひとつした。

ぼくは制服の上着を脱いでちーの肩に掛けた。


「寝てたから冷えたんだろうね。そのまま掛けてるといいよ。」

「浩にい、いいの? ありがとう。温かいね。」

「頭に栄養補給するね。ちーもいっしょにチョコ食べよう。」

ちーはぼくの顔を見ながら、蕩けてしまいそうな笑顔を返してきた。(終)



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