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問題



浩にいと勉強の日。

浩にいが家庭教師として家に来るのは、週2回。

見てもらう教科は数?、数Aと英語が主。

問題集であらかじめやると決めたページ数を解き進めていく。

でも、それに限らず、違う勉強をすることも。

古文で分からなかったこととか、生物の宿題でレポート書かなければならない時とか、

世界史で小テストが控えているときとか、結構、広い範囲の教科を見てくれた。

浩にいの大学での専攻は数学。

でも、それ以外の教科は苦手のようで。

中学校のレベルでは専門外の教科もそれなりに余裕で教えてくれたものの、

高校の勉強になると勝手が違うよう。

「これはなんだ?」と、自信なさげに首を傾げることがある。

そんな仕草をする浩にいは、先生というよりもわたしと同じ生徒みたい。

生徒同士の勉強会でお互い頭を捻って宿題解いているみたいな。

その時ばかりは浩にいがぐっとわたしと近い所にいる感じがした。


勉強する場所はわたしの部屋か浩にいの部屋。

たまに1階のリビングでもする。

時間は夕飯が済んでからの、夜7時から9時の間。

母は浩にいにお茶を出す以外は、わたしたちが集中して勉強できるよう、

必要以上に干渉はしない。

そして浩にいのお母さんも同じ。

中3の頃は待ちきれずに、浩にいが家にいなくても部屋に入った。

待ってるうちに部屋で居眠りしてしまったいた。

でも高校は浩にいから「お互い許可なく部屋に入らないこと。」と言われ、それに従っている。

だから浩にいの部屋で居眠りすることはなくなった。


これが高校生として当たり前のことなのかな・・・。


でも別の考えも浮かぶ。

浩にい自身が、嫌だったんじゃないかって。

わたしが勝手にベッドで眠ってたこと。


そうだったら悲しい。


勉強教えてくれている様子は変わらないように思える。


でも、浩にいの心の中の、本当に知りたいことは分かっていない。



課題で指定したページの問題を解いていく。

悩みに悩んで、導き出した解答をノートに書き込んでいく。

浩にいは関節の太い長い指で赤ペンを持ち採点する。

思ったよりも多くの丸をもらえた。

浩にいは「よくがんばったね。」とわたしの頭を撫でてほめてくれた。

その手はいつもと変わらず優しい。


浩にいに頭を撫でられていると、胸の奥がきゅんと疼く。


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週に二日はちーの家庭教師の日。

教えている教科は数学と英語、他諸々。

中学とは勝手が違い、高校の勉強は教える方も気楽とはいかない。

ぼくが大学で学んでいる数学はいいとして、

他の教科、特に古典などは忘れていることも多かった。

教科書を前に四苦八苦する。

家庭教師としてどうなんだろうという様を晒している。

ちーはそんなぼくと一緒に問題に取り組む。

そんなときは、年上の面目などあったものじゃない。

実際こんな家庭教師、他の家では通用しないだろう。

でもちーはぼくの言う事を聞き、勉強してくれる。

教科の下調べはまめにするべき。

つくづく思った。


ここのところ頼りない面ばかりを見せている気がする。

ちーに、「浩にいってこんな人?」とがっかりされるのはつらい。

5歳の差は、同級生では決して作れないイメージ、

「頼もしいお兄さん」という理想像をももたらしていただろう。

その像も、めっきが剥がれてまくっている。


家庭教師を続ける際にぼくはちーに約束させた。

お互いの許可なしで、勝手に部屋に入らないこと。

家庭教師をする日はお父さんかお母さんがいる日、時間を意識して決めた。

(お母さんがいることがほとんどだけど。)

勉強の際、部屋のドアを開けてした。


これは、ちーを傷つけないための予防線、枷だ。

ちーが「なんで?」と、その訳を聞かなかったことがありがたかった。


もうちーがぼくのベッドで居眠りしていることはない。

実際その姿を見たらぼくの理性の抑制が利かなくなりそうで。


ぼくが彼女に、ありのままの感情をさらし、女性として求めるにはまだ早すぎる。


意識して枷をつける。

より強力な枷を。

そうでないとすぐに壊してしまいそう。


ちーに見せていないほんとうのぼくをちーが知ったとき、どういう風にちーが思うのか。

ぼくはつくづく臆病。



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