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おかえり、ただいま(後)



おほしさま 8がつ28にち はれ


おじさんのいえに行ってのたのしみ。

つかめそうなほどのたくさんのほし。

きのうはあめで見られなかったけれど、きょうははれ。

いっぱいほしがでていた。

ほんとうにてにとどきそう。

でも、てをのばしてみると、ずっととおくてとどかない。


きらきら、きらきら。

まっくろのそらに、ひかるいっぱいのほし。


見ているとすいこまれる。

ぶるりとからだがふるえた


わたしのいるいえからは見えないほし。

でもちゃんと、そらにあるそうだ。

おじさんのところみたいに。


よるのそらでもちがって見える。

でも同じよるのそら?


ひろにいちゃんはここにいないけど、

ひろにいちゃんの目にもなったつもりでいっぱい見るよ。


それでね、いっぱいおはなしするからね。


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おかえり 8月29日 晴れ


今朝もまだちーたちは帰ってきていなかった。

夏休みも終わるというのにどこに行っているのだろう。


まさか、帰って来れない状況になっているのでは?

変な不安がぼくの心に押し寄せる。


ちーの家が見える窓に行ったり来たり。

どうにも落ち着かなかった。


今日もじりじり太陽が照りつける。

この暑さ、太陽もいい加減飽きないかと思うけれど、まだ続くらしい。

クーラーはぼくの部屋と、両親の寝室、リビングにしかなくて、

廊下、階段は通していないからむわんと蒸せっている。

ちーの家はそれこそ人がいないのだから、どんなにか温度が上がっていることだろう。


昼をすぎた頃。

ずっと見続けていた路地に、ちーたちの姿を見つける。

ちーは出かけた時と同じ白いワンピースで帰って来た。


ぼくは急いで玄関へと降りる。

深く息を吸い込んでから、なんでもない風を装い玄関の扉を開けた。


「おにいちゃん!」

ちーがぼくの姿を見るなり、大きな声で言う。

そしてぼくの方へ、ボールが弾むように駆けてきた。


ちーだ。

本物のちーだ。


ぼくは胸がいっぱいいっぱいだった。

ちーを前に「おかえり」と言うのがやっとだった。


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ただいま 8がつ29にち はれ


きょう、いえにかえってきた。


おじさんのいえには、にはくみっかのおとまり。

あっというまだけれどおもしろかった。


あかちゃんと、ほし。

よるはクーラーなくてもすずしくて。


へびはあわなくてほっとした。

けれど大きなくもがいた。

ながいあしにちゃいろっぽいくも。

それがトイレのそとの木に大きなすをはっていた。


ああ、くものことは、ひろにいちゃんにはなすといやがるかな?

へびのこといったときもびっくりしてたもの。


そういえば、しゅくだいはまだできてない。

なつやすみののこりの日でおわらせないと。


おにいちゃんはもうおわったかな。


みちをまがるとひろにいちゃんがいた。

わたしは「おにいちゃん」っていいながらはしった。

「おかえり。」っていうおにいちゃんのうでにだきついた。

おにいちゃんのにおいごといきをすうと、やっぱりミルクのにおいはしない。

レモンみたいなにおいがほんのりする。


わたしはおにいちゃんに「ただいま」っていいながら、ぎゅっと、うでの力をつよくした。







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