おかえり、ただいま(後) おほしさま 8がつ28にち はれ おじさんのいえに行ってのたのしみ。 つかめそうなほどのたくさんのほし。 きのうはあめで見られなかったけれど、きょうははれ。 いっぱいほしがでていた。 ほんとうにてにとどきそう。 でも、てをのばしてみると、ずっととおくてとどかない。 きらきら、きらきら。 まっくろのそらに、ひかるいっぱいのほし。 見ているとすいこまれる。 ぶるりとからだがふるえた わたしのいるいえからは見えないほし。 でもちゃんと、そらにあるそうだ。 おじさんのところみたいに。 よるのそらでもちがって見える。 でも同じよるのそら? ひろにいちゃんはここにいないけど、 ひろにいちゃんの目にもなったつもりでいっぱい見るよ。 それでね、いっぱいおはなしするからね。 ***************************************************************** おかえり 8月29日 晴れ 今朝もまだちーたちは帰ってきていなかった。 夏休みも終わるというのにどこに行っているのだろう。 まさか、帰って来れない状況になっているのでは? 変な不安がぼくの心に押し寄せる。 ちーの家が見える窓に行ったり来たり。 どうにも落ち着かなかった。 今日もじりじり太陽が照りつける。 この暑さ、太陽もいい加減飽きないかと思うけれど、まだ続くらしい。 クーラーはぼくの部屋と、両親の寝室、リビングにしかなくて、 廊下、階段は通していないからむわんと蒸せっている。 ちーの家はそれこそ人がいないのだから、どんなにか温度が上がっていることだろう。 昼をすぎた頃。 ずっと見続けていた路地に、ちーたちの姿を見つける。 ちーは出かけた時と同じ白いワンピースで帰って来た。 ぼくは急いで玄関へと降りる。 深く息を吸い込んでから、なんでもない風を装い玄関の扉を開けた。 「おにいちゃん!」 ちーがぼくの姿を見るなり、大きな声で言う。 そしてぼくの方へ、ボールが弾むように駆けてきた。 ちーだ。 本物のちーだ。 ぼくは胸がいっぱいいっぱいだった。 ちーを前に「おかえり」と言うのがやっとだった。 ***************************************************************** ただいま 8がつ29にち はれ きょう、いえにかえってきた。 おじさんのいえには、にはくみっかのおとまり。 あっというまだけれどおもしろかった。 あかちゃんと、ほし。 よるはクーラーなくてもすずしくて。 へびはあわなくてほっとした。 けれど大きなくもがいた。 ながいあしにちゃいろっぽいくも。 それがトイレのそとの木に大きなすをはっていた。 ああ、くものことは、ひろにいちゃんにはなすといやがるかな? へびのこといったときもびっくりしてたもの。 そういえば、しゅくだいはまだできてない。 なつやすみののこりの日でおわらせないと。 おにいちゃんはもうおわったかな。 みちをまがるとひろにいちゃんがいた。 わたしは「おにいちゃん」っていいながらはしった。 「おかえり。」っていうおにいちゃんのうでにだきついた。 おにいちゃんのにおいごといきをすうと、やっぱりミルクのにおいはしない。 レモンみたいなにおいがほんのりする。 わたしはおにいちゃんに「ただいま」っていいながら、ぎゅっと、うでの力をつよくした。 |